節税セレクト Vol.1 その設定額が節税のカギとなる!正統派節税の代表格「役員報酬」
お金の支出:無し
節税効果:◎
導入のしやすさ:◎
事業も軌道に乗ってきて、今年は会社の利益もしっかり残せそうなんだ!来年は僕の役員報酬を高めに設定して、ちょっと贅沢な1年を過ごそうかなあ・・・
ちょっと待つニャ!役員報酬の支払い方によっては、個人で支払うべき税金が大きく異なるニャ!家族への役員報酬で、報酬を分散することも一度考えてみてほしいニャ!
最優先で着手すべき正統派節税 「役員報酬」
役員報酬とは、法人だからこそ支給できる報酬形態です。
今まで個人事業主だった方は、法人を設立したからには、家族への役員報酬の支給も含め、節税を検討することをおすすめします。
家族への役員報酬の支給は、税制面でのメリットが非常に多いため、可能であれば早めに導入していきましょう。
家族への役員報酬がなぜ節税につながる?
「家族へ役員報酬を支払うことが、なぜ節税につながるの?」
「役員報酬の総額が同じだったら、一人でもらうのも家族でもらうのも一緒じゃない?」
そんな声が聞こえてきそうなので、まずはその疑問にお答えします。
それはずばり「社長一人当たりの所得税が少なくなる」からです!
ひとりで多額の報酬を受け取るよりも、家族で所得を分散した方が、所得税率は低くなります。
所得税は累進課税制度といって、所得の大きさによって税率が変わります。
簡単に言うと、たくさん儲けている人の方が、設けた金額に対する税金の割合も大きくなるよってことですね。
現時点での所得税法では、所得に応じて5%〜最大で45%の税率が適用されます。(すごい差ですね!)
具体的な例で比較してみよう
いまいちピンとこない人も多いと思うので、具体的な例で説明します。
【前提条件】
・役員報酬の総額=2,000万円
・給与所得控除、基礎控除、社会保険料を考慮(配偶者控除は適用不可、扶養控除は考慮なし)
【パターン①】社長一人で2,000万円を受け取る場合
役員報酬:2,000万円
給与所得控除:△195万円
社会保険料概算:△168万円
基礎控除:△48万円
税金がかかる所得:1,589万円(上記の差引合計)
所得税:(1,589万円×33%)-153.6万円=約370万円
【パターン②】家族へ分散した場合
・社長
役員報酬:1,000万円
給与所得控除:△195万円
社会保険料概算:△129万円
基礎控除:△48円
税金がかかる所得:628万円
所得税:(628万円×20%)-42.75円=約82万円(A)
・配偶者(妻)
役員報酬:600万円
給与所得控除:△164万円
社会保険料概算:△89.8万円
基礎控除:△48万円
税金がかかる所得:298.2万円
所得税:(298.2万円×10%)-9.75万円=約20万円(B)
・長男
役員報酬:400万円
給与所得控除:△124万円
社会保険料概算:△61万円
基礎控除:△48万円
税金がかかる所得:167万円
所得税:167万円×5%=約8万円(C)
所得税の差額:370万円(社長一人の場合)-110万円(A+B+C)=△260万円
社会保険料の差額:+約111万円(会社負担も合わせると約227万円)
以上のように、役員報酬を社長ひとりではなく家族へ配分することで、所得税は260万円もの節税につながります!
めちゃくちゃ大きいですよね。
これが累進課税制度をうまく利用した家族への役員報酬支給の節税方法です。
社会保険料は増えてしまう
ただし、注意すべき点が一つあります。
上記の計算式の結果を見てお気づきの方もいるかもしれませんが、社会保険料の負担は、パターン①の場合より増えてしまっています。
これは役員報酬を支給する頭数が多くなったことが原因です。
ただし、所得税と差し引きしても節税効果が見込めるうえに、社会保険料を多く支払えば、将来的に家族でもらえる年金額が増加しますので、表面的な数字以上のメリットがあります。
ここで覚えておいてほしいのは、家族の誰に(何人に)、いくら支払えば最適な節税になるのかというのは、会社によって、さらには社長自身の家族構成によって千差万別だということです。
家族への役員報酬、いくらで設定する?
さて、家族への役員報酬が節税につながる仕組みが分かったところで「早速家族にも役員報酬を!」と考えた経営者が最初に必ずぶつかるのが
「家族への役員報酬って、いくらまであげれるの?」という疑問でしょう。
「自分が社長なんだし、いくらでもいいんじゃないの?」とお考えの人もいるかもしれませんが、大間違いです!
この役員報酬の設定金額を間違えば、かえって税金を多く払う羽目になることも。
最悪の場合は、税務否認され、重加算税を課せられてしまう可能性も出てきてしまいます。
役員報酬の決め方に明確な基準はない
残念ながら、家族への役員報酬の金額について「配偶者であれば○○円まで」「長男であれば△△円まで」といったような明確な基準はありません。
では税務署はその金額をどのような視点で見ているのか。
それは「役員報酬の金額が対価として相当と認められる金額かどうか」です。
すごく漠然としていますよね。
ですのでここでは税務署が「役員報酬の金額が対価として相当」かどうかを決める2つの基準をご紹介します。
役員報酬の金額の判定基準①「実質基準」
1つ目は「実質基準」です。具体的には以下の通りです。
・職務内容
・勤務実態
・勤務年数
・業務への責任割合
・年齢や会社への貢献度
・会社の業績
・従業員の給与とのバランス
・同業他社との比較 等
これらをもとに判断していきます。
役員報酬の金額の判定基準①「形式基準」
2つ目は形式基準です。こちらは分かりやすいかもしれません。
つまり、定款や株主総会の決議で報酬金額の限度額を決めている場合は、その限度額が上限となります。
実務的な役員報酬の決め方
さて、実質基準と形式基準があるということが分かったとはいえ、「ん~・・・結局いくらにすべきか具体的に分かりにくいよ・・・」という声に応えるべく、実務的な考え方を2つ紹介します。
①家族以外の役員報酬を参考にする
会社に家族以外の役員がいる場合は、その役員と同じ金額水準を目安に考えましょう。
他の役員に比べあまりに乖離した金額の設定は、税務否認の対象になってしまいます。
②過去の税務調査結果や判例を参考にする
役員がすべて親族の場合は①の方法は参考になりませんね。
なので、過去の税務調査等のデータを参考にするとよいです。
なるほど!僕一人で役員報酬をもらうより、家族で分散してもらうほうが、税率も下がるし、将来の年金支給額も増やすことにつながるんだね。
そういうことだニャ。ただ、最適な支給金額のバランスというのは少し専門的な知識が必要ニャ。実際に家族に役員報酬を支給することを考えるなら、税務否認のリスクに対応するためにも、担当の税理士と相談しながらすすめることがおすすめニャ!