節税セレクト Vol.4 飲食代はどこまで経費で落とせる?簡単そうで分かりにくい正統派節税「5,000円以下交際費」

お金の支出:無し

節税効果:◎

導入のしやすさ:◎

今回は4つ目の正統派節税「5,000円以下交際費」についてだね。よく、居酒屋とかで領収書を法人でもらっている人を見かけるけど、ああいう場所での飲食代って経費で落とせるの?

どんな場所での飲食代でも、条件さえクリアできれば経費として計上可能ニャ!でもその話をする前に、この「交際費」を説明する上で「接待交際費」「会議費」「福利厚生費」など、皆が混乱しやすい用語が沢山出てくるから、まずはその説明をするニャ!

目次

お店での飲食代の勘定科目って何?それって経費で落とせるの?

よく取引先の人との会食や、社内のメンバーで食事をしながらの打ち合わせにかかった費用について、交際費なのか会議費なのか、はたまた福利厚生費なのかよく分かりませんという相談をよく受けます。

さらに「交際費」と言ったり時には「接待交際費」と言ったり、いったい何通りの言い方があるんだと、わけが分からなくなってしまう方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。

たしかに、非常に分かりにくいですよね。

ここでは、これらの使い分けと、どうすれば節税につなげられるかを整理しながらお話ししていこうと思います。

ずばり、交際費とは

交際費とは、税法上で規定されている費用のひとつで、法人がその得意先や仕入れ先などの利害関係者に接待・贈答といった行為のために支出したものを指します。

交際費は事業に貢献する費用とは必ずしも捉えられず、「基本的に」は損金に算入できないという考え方があります。

ただ、これはあくまで「基本的に」ですので、その例外が大事になってきます。

こちらは後述しますので、今はなんとなく、交際費の意味を把握しておいてもらえればと思います。

「交際費」と「接待交際費」は同義です

交際費の話をする際、「接待交際費」という言葉がよく出てきます。

よく、「交際費」とは別に「接待交際費」という勘定科目があるのではないかと勘違いされやすいのですが、そうではありません。

「接待交際費」とは、経理上の正式名称ではなく、交際費と同様の費用に対する俗称です。

この「接待交際費」も勘定科目名としては設定することができますが、交際費と同じく、基本的に損金算入ができません。

あまり難しく考えず、勘定科目上の名称が異なるだけ、と覚えていただければ問題ありません。

会議費、福利厚生費との違いは?

基本的に損金に算入されない交際費(接待交際費)と混同されがちな勘定科目が「会議費」と「福利厚生費」です。

「会議費」と「福利厚生費」はあくまで事業を行う上での必要経費として捉えられますので、全額損金に算入されます。

では、この損金に算入できない「交際費」と、全額損金に算入できる「会議費」「福利厚生費」はどのように判別するのでしょうか。

おおよその考え方は以下の通りです。

  1. 会議費として判定される(損金算入できる)ケース
    通常の社内ミーティングや社外利害関係者との業務の打ち合わせなど、通常の業務の範囲内の会議にかかる費用であれば、業務の遂行に必要な経費と考えることができ、会議費として損金算入が可能です。
  2. 福利厚生費として判定される(損金算入できる)ケース
    通常業務に必要な経費ではないものの、従業員全員を対象として飲食などの支出を行った場合、その費用は福利厚生費として計上され、事業に必要な経費として損金算入されます。
  3. 交際費として判定される(損金算入できない)ケース
    通常の業務に必要な経費ではなく、社外の利害関係者と関係を良好に保つための接待飲食などで支出された費用は交際費として計上され、基本的に損金算入されません。

つまり経営者の視点で整理すれば、①社内・社外問わず、一般的な「会議」の実態を伴ったものに必要な飲食費等(会議費)と、②社内の全員を対象とした飲食費等(福利厚生費)は全額損金に算入できるため、特に懸念点はありませんね。

やっかいなのが基本的に損金算入されない③社外、もしくは社内の一部の人達との、一般的な「会議」とは言えないような飲食費等(交際費)です。

でも安心してください。

上述したように、交際費は「基本的に」損金算入されないのであって、交際費であっても損金算入できる場合があります。

ここからは、ここにフォーカスしてお話ししていきます。

【補足】2024年度税制改正大綱により、経費として認められる1人あたり5000円以下の飲食費を1万円以下まで拡充する方針が明記されました。2024年4月1日以後に関しては、以下の文章を「5000円以下」→「1万円以下」に読み替えてご参照ください。

交際費が損金算入できる条件とは

ここまで交際費(接待交際費)は「基本的に」損金算入されないと説明してきましたが、税務上、次のいずれかに該当する場合は交際費であっても損金算入することを許容しています。

5,000円以下の場合、例外的に「会議費」として全額を損金算入できる

上記において③の「交際費」として判別された場合でも、それらにかかった飲食費等が1人につき5,000円以下の支出であれば、それは例外的に「会議費」として計上することができ、上記の①と同様に全額損金とすることができます。

ただし会議費として計上するには、しかるべき書類や情報が適切に保管されている必要があります。

具体的には、下記のような事項を帳簿上に残すことで計上が可能となります。

・飲食の日付
・飲食に参加したメンバーの氏名とその関係
・飲食に参加した人数
・飲食の金額、飲食店の名称および所在地
・その費用が飲食費であることを明らかにするその他必要事項

引用:国税庁|No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算

なお、この5,000円以下の交際費に判別された場合、特に会議費として計上しなくてはいけない理由はないのですが、全額を損金算入できる費用であるため、便宜上会議費として計上することが一般的です。

これが、この交際費と会議費を混同されてしまう大きな原因となっているんですね。

年間800万円までの交際費は損金算入できる

1人当たりの飲食費等が5,000円を超えてしまった場合も諦めないでください。

資本金1億円以下の法人であれば、年800万円までの交際費は損金算入ができるんです。

具体的には、申告書の別表十五における交際費等の損金算入に関する明細書のなかでこの部分を考慮して計算を行い、算定した「交際費等の損金不算入額」を別表四にて加算調整します。

まとめ

では、結局どうすれば最も効果的な節税につながるのか。

私が皆さんにアドバイスする際は、「飲食の際は、1人当たりの飲食費の金額を5,000 円以内に抑えるてください。」とお伝えしています。

例えば、お客さんと食事に行って3人で14,000 円だったら会議費でOK、16,000 円
なら交際費として処理しないといけないということですね。

交際費として処理した場合も800万円までは損金算入できるものの、間違いないのは5,000円以下で抑えた会議費です。

ここで大事なのは、上述したようなしかるべき情報を残すために、きちんと領収書などにどこの誰と何人で行ったのかというのを記載しておくことです。

なお、よく聞かれるのが居酒屋やスナックのようなところでの飲食代でも、5,000円以下であれば会議費として計上できるのか?という質問ですが、問題ありません。

場所に限らず、接待のための飲食であれば1人当たり5,000 円という基準が適用されます。

お店で料理やお酒を注文するときに「5,000円以内か」を気にしながら飲み食いするのはちょっと残念ですが、少しでも経費にしたい方は5,000円という数字を意識してみてください。

なるほど!1人当たり5,000円以下の飲食費であれば、上限に関わらず全額損金に算入できるんだね。1度の飲食では金額は小さいけど、その積み重ねになれば大きな節税につながりそうだね!

そういうことだニャ。ちょっと専門用語がややこしくて混乱してしまいそうだけど、金額と、その情報の残し方さえ気にすればすぐに節税につながる超効果的な節税方法の1つニャ!やらない手は無いニャ!